ジンです。
前回、Ray-Ban Meta (Gen2)のレビュー記事を書きました。話題のAIグラスを使ってみての使用感をまとめてみたものです。
では、僕ならではの視点、ゲーマーとしての目線で考えてみると、どうか。
「AIグラスをeスポーツに取り入れる」と言われて真っ先に思いつくのは、視界の中に情報を表示するような、戦略的な情報視覚化的な使い方だと思います。FPSなどでマップや装備、味方チームの状況、相手チームの状況などをレンズ越しに確認できたりとか、そういう方向性。
将来的には間違いなくこういうシーンが見られることになると思います。ただ、今回話したいのはこういった話ではなく、もっとシンプルな話。
選手視点での目線や緊張感を記録として残したい。というものです。
最初は「AIグラスかけとけば、選手の周りでスマホやアクションカメラ構えてなくてラクじゃん」という風に考えたのですが、それよりも選手の視点で「一番良い位置で画面が撮れて」「試合中の臨場感、試合後の仲間の表情」などが残せる、別の誰かがそれを観れるって素晴らしくないですか、と思ったわけです。
実際昔の自分達の大会の動画とか残ってたら見たいなあって。
このように思った経緯と、これを導入するとなった場合のメリットデメリットなどを考えてみました。
もし興味があれば、読んでもらえたら嬉しいです。
それでは、本文。
感動のジョッキーカメラ
本記事のきっかけは、少し前にYouTubeに流れてきたあの動画。
皆さんは観ましたか?先日行われた競馬G1『オークス』のジョッキーカメラ。
2026年5月24日のオークス(GⅠ)、今村聖奈騎手が騎乗するジュウリョクピエロが勝利して、JRA所属の女性騎手として史上初のGⅠ制覇を達成。レース後に公開されたジョッキーカメラの映像が、たくさんの反響を呼びました。
観客席やテレビ中継のカメラでは絶対に映らない、騎手本人の目線。最後尾から馬群をかき分けて進み、トップでゴールするまでの数秒間、視界がぐんぐん開けていく感覚がそのまま伝わってきて、観ているこっちまで気持ちよくなるような。ゴール直前の景色の揺れ方や、周りの騎手との距離感まで伝わってくる感じがあって、通常の競馬中継では味わえない臨場感。
また良かったのが、ゴールした瞬間で終わらず、そのあとの光景も非常に素晴らしいです。レース終了直後の本人の言葉、相棒のジュウリョクピエロに話しかける様子、周りのスタッフからの涙まじりの祝福の声かけ、地下馬道に戻るところまでしっかり収録されています。レースそのものの迫力だけじゃなく、レース後の「人としての反応」まで残っているのが、この映像がここまで感動を呼んだ理由の一つなんじゃないかと。
この動画は、公開から9日後の6月3日時点で再生回数は358万6,000回を突破、歴代のジョッキーカメラの中でも史上1位の再生数を記録したと報じられています。この記事を書いている時点では再生回数436万回、高評価も10万件を超えていて、今も伸び続けている状態です。1本の映像がここまで多くの人を動かしたというのは、それだけ「選手本人の目線」というものの力が強いということなんだと思います。
その他スポーツの導入事例
調べてみたら、ジョッキーカメラのような「選手視点映像」は、他競技でもすでに実用化が進んでいました。
代表的なのはF1の「ドライバーズ・アイ」。ヘルメットの内側にマイクロカメラを仕込んで、ドライバー本人の視界に近い映像を中継に流す仕組みです。2021年のベルギーGPでテスト導入され、2023年シーズンからは全ドライバーのヘルメットに標準搭載されるまでになりました。時速300km超で走るマシンからの視界がどれだけ狭いか、コーナーでどこを見ているかまで伝わってくる映像で、単純にファンとして興奮する中継の一つになっています。
このように、選手のパフォーマンスを落とすことなく、”選手視点の映像”を残すことができるようになった今、これらは大きな需要があるものなのではと僕は考えています。さらに言うと、AIグラスであればF1のヘルメットカメラのような専用機材を用意する必要もなく、通常の眼鏡と同じ感覚で導入が可能という点に、僕は可能性を感じています。
「選手視点の映像」の価値
ここまでの話を整理すると、選手視点の映像が刺さる理由はシンプル。
観客視点の配信や実況は、基本的に「見ている側の理解しやすさ」を優先して作られています。カメラは常に引きの絵を映すし、実況・解説も状況を整理しながら喋ってくれる。わかりやすいけど、その分、参加者一人一人の緊張感や興奮を伝え切ることは難しい。
一方で選手視点の映像は、逆に「わかりやすさ」を手放してでも「その場にいる感覚」を優先したものになります。呼吸、視線の動き、緊張感や仲間の顔、相手の顔。整理されていないからこそ、当事者が感じたものがそのまま流れ込んでくる。本来、”その人”しか味わえないはずのものを、映像を通して味わうことができるのです。ジョッキーカメラにしても、ドライバーズ・アイにしても、こういった面がファンを興奮や感動を誘うのでは、と思います。
もう一つ大きいのが、記録としての価値です。観客視点の映像は、あくまで「大会の記録」として残ります。一方で選手視点の映像は、選手本人にとって「自分がその瞬間に何を見て、何を感じていたか」がそのまま残る、いわば一人称の記憶そのものです。人の記憶は時間が経つほど薄れていきますが、映像として残っていれば、何年経ってもあの瞬間の景色をそのまま見返すことができます。今村騎手にとっても、あのジョッキーカメラの映像は、単なる中継映像以上に一生モノの記録になっているはずです。
そして、これは観る側にとっても同じことが言えます。選手視点の映像を見ることで、その選手に対して「一人の人間」として近く感じられる瞬間があります。普段は画面の向こうの「プレイヤー」「競技者」、あるいは「別世界の人間」として見ていた人間と、意識を共有できる瞬間がある。この感覚は、ファンとの距離を縮める、という意味でかなり強い武器になるはずです。
ゲームの大会で使うとすると
同じように、ゲームの大会でもこういった記録ができていたら。
試合中のプレイ内容はもちろん、試合前の仲間との会話や対戦相手との空気感、試合後の様子まで。場合によっては壇上などから見た観客席の様子も。勝っても負けても、こういった様子が記録として残っていたら、きっと価値があるものになるのではと思います。
そしてこれは格ゲーに限った話ではなく、他のシーンでも。FPSなら仲間との会話や目配せ、試合後の喜びや反省、後悔。カードゲームなら選手視点で見た相手のデッキ、空気などが残せます。
選手視点の映像は、観客への訴求力としてかなり強い武器になるはずです。
運営側のメリット・デメリット
運営側やスポンサー側にも、メリットが生まれる可能性があります。
- ハイライト素材としての強さ:選手視点の映像はそのまま使い勝手の良いハイライト素材になる。「あの大会でしか観られない映像」は大会自体のプロモーション価値にも直結する
- 新しい広告枠になる可能性:選手の目線越しに映るブースやロゴは、観客視点とは違う角度からの露出になる。「選手が実際に見ている景色」自体がコンテンツとして価値を持つ
- アーカイブとしての二次利用:通常のハイライト映像より刺さる素材として、試合後の展開にも使いやすい
一方ではデメリットも。
- 情報漏洩のリスク:プレイヤーの情報(知識や対策)が意図せず漏れる可能性がある。競技によっては、選手視点の映像がそのまま「攻略情報」になってしまうことも
- 運営側の負担増:撮影機材の準備・管理、配信システムの構築、選手やチームとの権利関係の整理など、通常の配信より調整すべき項目が増える
- ブランドイメージのコントロールの難しさ:選手視点の映像は素の反応がそのまま映るぶん、想定外の言動やトラブルがそのまま流れてしまうリスクもある(発言の自由度低下)
メリットとデメリットを天秤にかけたルール作りが課題になりそうです。
まとめ
「見たままを記録に残せる」AIグラスが、昔からあったら、僕が参加してきたいろんな大会やイベントシーンでも記録に残せたのにな、という思いから、少し深掘りつつ今回の記事を書いてみました。
バーチャファイターに一番熱中していた時期の、毎月のベイエリアカップの動画だったり、最後にBeat-tribe Cupで優勝した瞬間の自分の視点、みんなの表情、普通に見返したいですし、こうやって色々と考えていくと、記録や思い出としての使い方以外にも、観客やスポンサーに訴求できる点がある、という意味で可能性を感じる考察になったのではないかと。
個人として導入する場合はあくまで記録としてになりますが、それでも上記の通り十分価値のあるものになるのではないでしょうか。本記事を読んで、今後大会でAIグラスを使ってみたいなと思ってくれた方がいたら嬉しいなと思いつつ、今回の記事を終わります。
ではでは、また。


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